2016/12/01

家路

おはようございます。

「チョコレート島」

「春」には桜が咲き乱れ、
その島の住人達、
家族は「桜」の木の下で写真を撮って、
恋人たちは笑顔を交わし、
住人達は宴を繰り広げる。

そんな楽しそうな光景を横目に....

「夏」には一面、
緑が生い茂ってしその香りが漂う
チョコレート島の住人達は夏は
海水浴、川遊びにキャンプ、
夜は星空を眺めながら
チョコレート作りはどこへやら....

そんな楽しそうな光景を横目に....

「秋」はチョコレート島に
オバケかぼちゃが現れる
オバケが通った道には
美味しい物がたくさん....
サンマ、うなぎ、栗、梨、リンゴ、松茸
オバケなのにいい奴だな
一年に一度の大運動会も行われる
一番盛り上がる種目は

「カカオ豆・皮むき合戦」

そんな楽しそうな光景を横目に...

「冬」は寒さが厳しいけど
住人達は暖炉の前で
「焼きイモ」を頬張りながらクリスマス
子供たちは「サンタ」を待ちわびて
大人たちは大晦日の準備に忙しい
好きな音楽が流れる心地いい空間
チョコレート作りはいつも後回し...

家族はクリスマスケーキをどこに頼もうか、
兄妹たちは
イチゴが多いか少ないか仲良しゲンカ
流星の下
恋人たちは手をつなぎ
男たちはチキンを頬張りながら
酒と言葉を交わす。

そんな暖かい光景を横目に......。

外との温度差で
曇った窓ガラスから夜空を見上げると
月灯りに照らされた星空の下
プリンセスと魔女の姿
望遠鏡から覗く 

「光と影の世界」

何十年も時を刻んできた
古時計の音色だけが相棒だ.....

薪ストーブ前の特等席がお気に入り
マフラーをそっと首に...

「今日も寒くなりそうだ.....」

暖かい部屋での
チョコレート作りはゴメンだと
扉を開けて
白い雪道をひとり歩く....

古びた扉が閉まるのを振りかえると
雪道に「足音」が残ってる
誰の「足音」だろう

そして
今日もチョコレートおじさんは
チョコレートをつくる

誰の為に.....。

「おじさん。
僕にチョコレートの作り方教えてよ」
振りかえると
一人の小柄な少年が立っていた
少し震えているように見える

耳も赤く
靴下も履いていないようだ
ずっと外から家の中を眺めていたのだろうか。

「僕ね、病気で倒れたおばあちゃんに
カカオ豆からチョコレートを作ってやりたいんだ」
「病気!?」

「おばあちゃんはもう目が見なくて、
施設に入って僕のことなんて
覚えてないかもしれない。
おばあちゃんが元気になるような
魔法のチョコレートを作ってやりたいんだ」

「魔法のチョコレート.........」

「そして病気が治ったらね、
手に届きそうなぐらいな満天の星空を見せてあげるの」

「満天の星空??」

「うん。小さな島なんだけど、
とってもきれいに星が見えるんだ。
手を伸ばしたら届きそうなくらいにね」

「...」

「チョコレート作りは大変だぞ」

「う、うん.......」

「すっごく大変だぞ!!」

「うん...」

「やめておきなさい、
他の仕事についてお金を貯めて、
おばあちゃんに薬を買ってあげるんだ。
そっちのほうがいい。
君には無理だ。やめておきなさい」

「嫌だ!! 約束したんだ、
おばあちゃんと。
元気になるチョコレートを作るって」

「無理だ。
君はチョコレートを作ったことがあるのかい?
どこかで勉強はしたの?
素人には無理だよ。やめておくんだ...」

「嫌だ!! 絶対に嫌だぁぁぁ!! 
おばあちゃんと約束したんだ。
じゃあ何でおじさんはチョコレート作りを始めたのさ?
何で? 何でだよ!! 
何でおじさんはチョコレートを作り続けるの?
おじさんが作るチョコレートは
魔法のチョコレートなんでしょ。」

「みんな言ってるよ。
魔法のチョコレートだって...」

「...」

「おじさんは
誰の為にチョコレートを作ってるの?
どこから来たの?」

「...」

「何でチョコレートを作り続けるの?
これからも作るんでしょ!?」

「...」

「ねぇ........おじさん答えてよ。
何で黙ってるんだよ!!」

「...」

「...誰の為に」
「よし分かった。ついてきなさい。
まずはホットミルクで身体を暖めよう。
もちろんチョコレートを入れてな...」

「さぁ来年の準備だ。
チョコレート談義はまた今度にしよう
新作のとろけるショコラと
チョコレートを味見してもらおうじゃないか」

-ON THE ROAD- CACAPON

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